【獣医師解説】柴犬に気をつけたい病気の概要

【獣医師解説】柴犬に気をつけたい病気の概要

 ピンと立った三角の耳、勇敢な顔立ち、丸まった尻尾といった特徴がチャームポイントの柴犬は日本犬で唯一小型犬に分類されており、実は天然記念物にも指定されています。

 その歴史はなんと縄文時代にまで遡ることができ、海外では「東洋的な犬」と注目を集めて「Shiba」と呼ばれていることからも非常に伝統的かつ人気のある犬種の1つだといえます。

  そんな柴犬の平均寿命は13歳〜16歳ほどといわれていますが、長生きだと20歳以上生きる例もあるとされています。

  比較的、健康なイメージのある柴犬ですが、犬種的にかかりやすい病気も存在します。また性格的に自立心が強く、飼い主さんにはとても忠実なことから体の具合が悪くても我慢してしまうことが多いため、注意が必要です。

 大切な家族の一員である柴犬に心身ともに元気で長生きしてもらうために、かかりやすい病気についてぜひ知っておきましょう。

 

 

皮膚炎

  柴犬は遺伝的に皮膚のバリア機能が弱く、また換毛期に大量の毛が抜けることなどから他の犬種と比べて皮膚のトラブルが多いという傾向があり、特に多く見られるのは「アレルギー性皮膚炎」や「アトピー性皮膚炎」です。

 「アレルギー性皮膚炎」ではアレルゲンというアレルギー症状を引き起こす原因物質によって、体内の免疫機構が過剰に反応してかゆみなどの症状が見られます。主に特定の食べ物がアレルゲンとなることが多いといわれています。

 「アトピー性皮膚炎」は皮膚のバリア機能が弱いことにより、環境中のハウスダストなどが刺激となってかゆみなどの症状が見られます。

症状だけではどちらの皮膚炎か判断することは難しく、また原因などによっては「アレルギー性皮膚炎」の1つの症状として「アトピー性皮膚炎」が起きていると考えるケースもあります。

  どちらにせよ激しいかゆみを伴うことが多いため、体をなめたり噛んだりする行動が頻繁に見られたら、動物病院を受診するようにしましょう。

  予防としては、定期的にブラッシングをしてあげたり、皮膚のケアに配慮されているドックフードをあげることなどがおすすめです。

 

 

外耳炎

  犬の耳の構造は主に外側から外耳(耳介)、外耳道、鼓膜、中耳と内耳に分けることができますが、外耳(耳介)や外耳道に炎症が起こることを「外耳炎」といいます。 

 

コッカー・スパニエルやキャバリアなどの耳が垂れている犬種によく見られますが、柴犬のように皮膚のバリア機能が弱い場合も発症しやすいといわれています。

かゆみを伴うことがほとんどのため症状としては耳をかゆがる、頭をよく振るなどの仕草や炎症によって耳が赤くなるなどが起こるため、可能ならば定期的に耳の中をチェックして何か気になる症状が見られた場合は動物病院に相談しましょう。

 

 

緑内障

 人間と同様に犬の眼の中も「房水」という液体で満たされており、「房水」によって必要な養分やいらなくなった老廃物の運搬などが行われています。

   この「房水」は角膜と虹彩の交わる場所にある「隅角」と呼ばれる出口から目の外へ出ていきますが、この出口が詰まってしまうことにより眼の中に「房水」がたまりすぎて眼球の中の圧力(眼圧)が上がってしまうことを「緑内障」といいます。

  柴犬は遺伝的にこの「房水」の通り道である「隅角」が狭い子が多いという報告があり、緑内障になる確率が他の犬種と比べて高いと考えられています。

  緑内障は重症化すると失明してしまう可能性があるため、初期症状である眼の充血や眼を細めたり、閉じることが多くなるなどが見られたら注意が必要です。

  また、早期発見のため、普段の健康診断の際に眼圧のチェックを加えてみてもいいでしょう。

 

 

認知症

 犬の認知症は認知機能不全(CCD)や高齢性認知機能不全(CDS)とも呼ばれ、獣医療の進歩やペット用品の質の向上などによって長生きする子が増えたことにより、以前よりも発症が増えてきています。

  認知症の原因は解明されていませんが、人間のアルツハイマー病と同じように脳の神経細胞へ「アミロイドβ」と呼ばれるタンパクが蓄積することによって、脳に異常を起こしているのではないかとの報告があります。

  柴犬が認知症になりやすい原因として、長生きする子が多いことにより老化現象として発症してしまうことや、性格的に神経質な側面があること、または日本犬であり主に魚を食べてきた柴犬にとって今のドックフードに含まれているDHAやEPAといったω‐3脂肪酸の量では足りないなどの様々なことが考えられています。

 11〜12歳を過ぎるころから発生率が高くなるといわれているため、ぐるぐると歩き回る、夜鳴きがひどいなどの症状が見られたら認知症を疑ってみてもいいかもしれません。

 

 

まとめ

  柴犬がかかりやすい病気について、ご理解いただけましたでしょうか?柴犬だからといって、今回ご説明した病気に必ずかかるというわけではありませんが予防や早期発見のためにも日頃のケアや定期的な健康診断など気をつけてあげてくださいね。

 

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